小中高校の消費者教育啓発Webゲーム「そのときあなたはどうする?」ワークブック・動画の作成

概要

 昨年度、学校教育の中でwebゲームを活用していただく前段階として、私たちの毎日の行動を見直し、そこに潜む選択のジレンマ問題に気づき、消費行動の見直しにつなげていくための小学校高学年用ワークブック「毎日の行動を見直そう!」を作成した。
 今年度は、さらに中高生向け用「毎日の行動を見直そう!」を作成し、学校教育の中での啓発活動の拡充を図ることとした。中高生用には、近年インターネットの普及に伴い、若年層がネット被害にあるケースが増えてきていることから、「毎日の行動を見直そう!」の情報編を作成し、情報リテラシーを考える機会としてもらうこととした。

リーフレットを制作するあたって

 内容は小学生用を基本の形として、中高生用、情報編に作り直すこととした。改善点は以下のとおりである。

<中高生用の修正点>

  • ジレンマ問題を中高生用に変更
  • ジレンマ問題を6個から8個に増やす
  • ルビをトル
  • イラストを中高生向けに変更
  • ワークブックの色を緑にする

<情報編の修正点>

  • 基本形は中高生用に準ずる
  • ジレンマ問題を情報リテラシーに関係する内容に変更
  • イラストを情報用に変更
  • 消費の説明部分を情報のリスクについての解説に変更
  • タイプ名を変更し、「優等生タイプ」、「加害者リスクタイプ」、「被害者リスクタイプ」とした
  • ワークブックの色をエンジにする

 一般的な消費行動とは異なり、自分では気づかないうちに加害者になったり、被害者になったりするリスクをはらんでいる。例えば、ネットで漫画の違法無料サイトにアクセスして読むことは犯罪となるし、自分のことを人に話した内容が知らない間にネットに広がることで誹謗中傷を受けるリスクもある。このようにネットを通じてだれもが加害者になったり被害者になってしまうリスクが潜んでいることに、中高生に気づいてもらいたいことから、情報編を作成した。そのため、タイプ名については、あえて「加害者リスクタイプ」と「被害者リスクタイプ」とした。タイプ名としては強い単語を使ったが、それ以上に自分では気づかないうちに加害者や被害者になることのほうが危険が大きく、リスクがあることに気づいてほしいとの思いがあり、リーダー会では強い単語を使うこととした。

 昨年度作成した小学校高学年用、今年作成した中高生用、中高生用情報編は、3月上旬に大阪府内の全国公私立小中高校1,871校に配布した。ホームページには本ワークブックを授業で活用する際の指導案、指導案に準じた自主学習用の動画を、ワークブックごとに掲載し、自由に使ってもらうことができる体制を整えた。ワークブックには、Webゲーム「そのときあなたはどうする?」紹介リーフレットを同封し、ワークブックを使った後、Webゲームに進んでさらに活用してもらえることを期待している。

企画から完成までの流れ

「そのときあなたはどうする?」ワークブックの作成のリーダー:中村美月(6期生)、メンバー:荒木友奈(6期生)、藤井千聖(6期生)、古賀彩乃(8期生)、永濱侑佳(8期生)

  1. 企画づくり:オンラインでのリーダー会議で、中高生用と情報編について、どんなワークブックを作成すればよいのか、意見交換した。使ってもらう場面、教科、学年、何が身近な問題なのか、そもそもこのワークブックの到達点はどこなのかなど、企画づくりを行った。小学校高学年用との違いについても検討を行った。
  2. どんなコンテンツを盛り込むか:ワークブックに入れる内容について検討を行った。盛り込む内容は、①私たちは毎日「選択のジレンマ問題」に囲まれていることに気づく、②自分の行動を振り返り消費タイプを示すことで、毎日の行動には意味がある事を知ってもらう、③毎日の行動に気づいたことを明日の行動につなげていってもらうように行動宣言を入れる、の3点に絞ることとした、この3点によって、このワークブックを通しての学びと到達点は、「毎日の何気ない行動にはそれぞれ自らが選択したものであり、そこには意味がある。その気づきから改善したほうがよい行動があれば、明日の行動宣言として発表し、自らの行動変容につなげていく」ことである。
  3. 情報編は、タイプ名の変更が必要であることが話し合われた。情報編で最も重要視する点は、自分では気づかないうちに加害者になったり被害者になったりするリスクをはらんでいることに気づいてもらうこととした。そのため、タイプ名の変更が必要と判断した。併せて、本ワークブックで「情報に潜むリスク」について考えてもらい、日ごろから注意してもらうことができるよう、情報リテラシーとしても活用できるようなジレンマ問題を作成することとした。
  4. 企画をワークブックの素案に落とし込む:リーダー会議で重ねた議論の内容を、ワークブックの形にどう落とし込むかの作業に移った。「毎日の行動を振り返る」中で、私たちは日々選択し、その行動の積み重ねが、結果的に周りに影響を与えることもあることに気づいてもらうために、中高生が毎日行っている身近な行動を「ジレンマ問題」としてQ&Aづくりを行うこととした。朝起きてから学校に行くまでの行動、学校に行ってからの行動、放課後の行動などのシーン、情報編ではネット関連の行動から8場面を取り出して問題作りを行うこととした。
  5. 行動の意味に気づく:選択の3つのタイプは、それぞれの行動に意味がある。その意味について考えてもらうための仕掛けを組み込むこととした。自分の選択した回答がどのタイプになるかを知ってもらうこと。もう1つは選択にはそれぞれ意味があることをしってもらうこと。情報編では、すべてのタイプの回答を用意するのではなく、犯しやすいリスクを念頭にタイプが重複する回答を設定することも可とした。
  6. 行動変容につなげる:選択の意味に気づいたら、自らの行動を変えていくことで、周りに良い影響を与えることができるような選択について考えてもらう。考えるだけでなく考えたことを行動につなげてもらうために、「行動宣言」をするワークを取り入れた。
  7. 色、ページ数などワークブックの体裁を検討し、完成させた。

ワークブックを使った授業用動画作成

 ワークブックを授業で使ってもらうために、ワークブックに基づいた指導案を作成し、授業用の動画を作成することとした。
 動画は、小学生用と同様に、中学、高校の授業1コマ内で使ってもらえるよう全体を30分の動画とした。この動画を見ながら自主学習もできる形にするために、30分通しての動画づくりを基本とした。
 ワークブックは導入から始まってSTEP1からSTEP3までの構成になっているが、それぞれのSTEPでの時間配分や児童のワークの時間なども計算し、動画全体を30分になるようにした。


 動画づくりにあたっては、羽衣国際大学の協力を得て、動画撮影を行った。まず指導案に基づいて台本を作成し、台本に沿って動画を撮影する。指導案と動画とワークブックを1パッケージとして一緒に使ってもらえるよう作成を進めていった。
 動画では、選択の意味や私たちの消費行動が社会に影響を与えていることや社会問題を解決する力にもなることなど、補足説明で紹介し理解を深めていけるよう台本作りを工夫することとした。
 情報編では、なぜ加害者リスク、被害者リスクがあるのかを実際の数字や法律などの説明を盛り込んだ。