追手門学院大学「キャリアデザイン」で1コマ100分講義を担当
概要
追手門学院大学から、リーダー会に講義の1コマを担当してほしいとの要望が寄せられた。授業を担当されている教員から依頼内容を伺ったところ、「キャリアデザイン」という授業の中で、学生たちには社会とつながっていることを意識することで、社会の一員として自分は何をすべきかを考えていくことが1つの目標になっているが、社会と積極的につながっていこうという意識が希薄な学生も多く、中には社会とつながりたくないと考えている学生がいることもあるとのお話であった。 リーダー会に依頼があった理由は、消費者教育という枠組みではあるが、リーダー会が活動の軸に置いている「一人ひとりは小さな力だが、みんなが集まると大きな社会課題の解決につながる」という考え方や、そのことを軸に啓発活動を展開していることと、「キャリアデザイン」の目標の1つになっている社会の一員として自分のやるべきことを考え行動することとは、市民教育として共通していることがあったからである。 そこで、このオファーについてリーダー会議で検討した結果、引き受けることを決定した。
講義当日までの流れ
追手門学院大学「キャリアデザイン」で1コマ100分講義のリーダー:長島亘輝(5期生)
- 授業の目的を確認し、カリキュラムを決定する: リーダー会議では、授業の目的と担当の教員が求めておられることについて理解し、どんなプログラムで実施すればいいか意見交換した。
本講義のねらいは、「大人になる存在として、社会への参画の意識や態度を高める」ことから、本時の目標を「「知らず知らずのうちに」自ら選択し、「知らず知らずのうちに」社会に関わり、地球の未来づくりに関わっていることに「気づく」」に設定した。理由は、社会と積極的に関わりたくない、あるいは関わろうとしない学生に、自分の意志とは裏腹に知らず知らずのうちに社会とかかわっていることや自分の行動が周りに影響を与えていることを知ってもらうことで、社会参画への意識を改めて考えてもらう機会としたかったためである。
この目標設定は、リーダー会の活動の基本が、自らの消費行動は結果的に社会や周りに影響を与えており、そのことを理解した上で自らの消費行動を考えることにあることから、その延長線上に、知らず知らずのうちに社会とかかわっていることに気づいてもらうには、自らの毎日の消費行動を改めて見直す場を提供することで、目標に使づくことができる、という考えに至ったからであった。 - カリキュラムを考える: 授業の目標が決まったことで、それを授業カリキュラムにどう落とし込んでいくかについて検討を行った。カリキュラムを考えるにあたって、昨年度りんくう翔南高校で行った授業を参考に、Webゲーム「そのときあなたはどうする?」を利用することをベースに考えることとした。その際に、りんくう翔南高校を担当した藤井君から、いきなりジレンマ問題を作成するのは難しいようで、高校生で最後までつくることができたのが2人だったという報告があった。リーダー会メンバーからも自分たちが受講生の課題で初めてジレンマ問題を作成した時に感じた難しさなどの意見が次々出てきた。
そこで、ゲームにたどり着く前に、導入部分として、まずは、私たちが社会とつながっていると考える「消費」について、「消費というのは毎日の生活であり、自分の生き方を体現していると言ってもいいもので、そこに注目して自分自身の在り方、社会へのかかわり方を考える」ということを中心に伝えるミニ講座1を置いて、まずは社会との関わりに気づいてもらうことから始めることにした。その後のワークでは、1日の自分の消費行動を時系列に書き出してもらい、書き出した行動が、社会とつながっていることに気づく時間とした。
続くミニ講義2では、1で気づいた毎日の行動が選択の連続で成り立っていることに気づいてもらい、その選択の先にある意味についても考えてもらう「選択のジレンマ問題」を考えてもらうこととした。りんくう翔南高校の事例を考えて、当日いきなり選択のジレンマ問題をかんがえてもらうのではなく、事前課題としてwebゲームに問題と回答を作成してもらってくることで、作るときに困ったことや、難しかったことについて発表しあうことを通して、選択の先にある意味について理解してもらう形にした。
なお、ミニ講座やリーダー会の紹介部分については、できるだけ短い時間で講義を行い、グループワークの時間を多くとることとした。グループワーク時には、リーダー会メンバーが、グループファシリテーターとして入りワークを円滑に進めることとした。 - 役割分担を決める:授業の流れとカリキュラムが決まったことから、それぞれの担当者を決めた。
【担当者】
全体ファシリテーター | 藤井 |
導入 | ファシリテーター、全員 |
・ミニ講義1:荒木(サポート中嶋) ・ミニ講義2:中村(サポート藤井) |
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リーダー会関連 | 長島 |
18歳成年啓発 | 米澤 |
【タスク】
ワークシートの作成、リーダー会紹介とお誘い台本 | 長島 |
ミニ講義1の台本作成 | 藤井&荒木 |
ミニ講義2の台本作成 | 中嶋&中村 |
全体台本 | 藤井 |
18歳成年啓発台本作成 | 米澤 |
当日
〇リーダー会参加者:長島亘輝、荒木夕奈、米澤悠、藤井優希、中村美月、(サポート:中嶋未歩)
〇講座名:キャリアデザイン
〇受講生:2回生~4回生 全学部 25名
〇時間:105分(9:30~11:15)
〇教室:追手門学院大学 総持寺キャンパス 3階A361教室
〇本講座のねらい:大人になる存在として、社会への参画の意識や態度を高める
〇本時の目標:「知らず知らずのうちに」自ら選択し、「知らず知らずのうちに」社会に関わり、地球の未来づくりに関わっていることに「気づく」
〇事前課題:Webゲーム「そのときあなたはどうする?」の問題を1問登録しておく
グループワークで使うワークシートに記入の上参加する
〇集合時間:JR総持寺駅改札口 8:40
事後アンケート
授業終了後に、受講した学生への事後アンケートを行った。
設問は以下の3問で、20名が回答した。
①消費者としての社会とのつながりをどのように感じましたか?
②日常の中のどのようなジレンマを発見しましたか?
③消費者市民(社会の一員)として、今後どのように過ごそうと考えますか?
アンケート結果から伺えるのは、105分という短い本授業を通して、本時で目指していた「社会とのつながりを意識」し、さらには、「自らの消費行動がジレンマの中で選択」されており、その要因の1つが「消費行動が社会とつながっており、社会に何らかの影響を与えている」ことへの気づきがほぼ全学生の回答から見て取れたことだ。自らの消費行動を見直し、次の消費行動を変えていこうとする姿勢を示した学生が30%いたが、③の質問では全員の学生が社会を意識した消費行動をしたいと考えていることも分かった。
これらの結果から、本講座で学生が伝えたいことは、受講生にほぼ伝わったように思う。昨年度高校生にジレンマ問題をつくってもらう授業を行ったが、最後までジレンマ問題を完成できた生徒は2名だけだった。その時の反省を踏まえ、導入部分で自らの行動を見つめ直す作業とその行動の意味や影響について伝えるミニ講座やワークを付け加えたことで、理解度がより深まったと思われる。いきなり選択のジレンマ問題を考えることは、自らの消費行動が及ぼす影響や社会とのつながりについて考えをめぐらすことなくただ問題を考える作業になっていたことに改めて気づかされた。今回の体験を、今年度作成するワークブックの内容を検討する際にも活かすこととした。